イギリス文化に親しむ会 ~ クレール詠美 トークイベントご報告

 1月に行われたイベントの様子を、主催団体である「イギリス文化に親しむ会」会員の斎藤 好美さんがレポートしてくださいました

 イギリス文化に親しむ会では、前回のクローディア先生に続き、現在は外交官夫人としてブラジルに滞在されている ドラマ英会話MLSのアンバセダーのクレール詠美(えみ)さんをお迎えし、帰国前の 1月25日 に藤沢の会場で、ご講演いただきました。

 終始笑顔を絶やさず、会場は華やかで温かな雰囲気に包まれました。NHKの英語教育番組への出演をはじめ、教育・報道・文化といった幅広い分野でのご経験について、丁寧でわかりやすくお話しくださり、あわせて英国が世界に与えてきた文化・経済・音楽・教育など多方面への影響についても、具体例を交えて解説してくださいました。

インターナショナルスクールで得た学び

 講演冒頭の自己紹介で、

「お国はどこですか? という質問が、実は一番難しいのです」

という印象的なお話がありました。

 詠美さんの父親は日本人の 太田先生(Ota-Sensei)、母親はスイス人の クローディア先生(Claudia-Sensei)。ご本人はインターナショナルスクールに通われ、50か国以上の国籍の生徒が在籍する環境で育たれました。教員もイギリス、アメリカ、カナダ、南アフリカ、フランス、オーストラリアなど多様な背景を持ち、さまざまな英語が日常的に使われていたそうです。

 

そのような環境で育ったからこそ、すべての国や文化への敬意と愛情が自然に育まれ、詠美さんの英語が「ニュートラルで分かりやすい」と評価される理由にもなっている、というお話がとても印象的でした。

特に心に残ったエピソードとして、

  • 世界的に著名な方々が学校に講演に訪れていたこと
  • 各国の大使の子どもたちも在籍しており、
    パレスチナ大使のお話の翌月にはイスラエル大使が来校するなど、
    世界の出来事を学校の中で身近に学び、理解し合い、支え合っていたこと
  • ダイアナ妃が亡くなられた際には、1週間、黒い服を着て喪に服したこと
  • 模擬国連の授業があり、自分の意見を表現する力を育てる教育が行われていたこと

などが紹介されました。

元公立高校教員である私自身、日本の公教育ではなかなか体験できない、個性を尊重し、多文化・多言語を自然に受け入れながら人間性を育てる、非常に豊かな教育環境だと強く感じました。

英国への留学

 

 詠美さんは奨学金を得て、イングランド南部の海辺の美しい街・ブライトンにある University of Sussex(サセックス大学) で学ばれました。(以下の写真は、ブライトンの街、学校の様子などです)

 

英国の大学の特徴として、次のようなお話がありました。

  • 学部は3年制、大学院は1年制 (日本と違いますね)
  • 留学生が非常に多い
  • 学習スタイルは個人の自主性を尊重
  • 指定教科書はなく、自分で文献を選んで学ぶ
  • テーマを決め、エッセイ中心の評価
  • キャンパスは小さな町のようで、薬局・スーパー・銀行・カフェテリアが揃っている
  • イギリスの学生さんは、入学前に1〜2年、世界を旅して見聞を広める Gap Year を取る人が多く、学生の年齢層が幅広い

 私自身も旧文部省派遣でランカスター大学に滞在した経験がありますが、当時お世話してくださった青年が、日本の中学校でALTを経験した後に大学へ進学し、「日本の教育の良さをイギリスにも取り入れたい」と語ってくれたことを思い出し、深く共感いたしました。

 

 また、英国文化の特徴として、

  • イギリス独特のユーモアとアイロニー
     (例:うまくいかなかった時に「最高だね」と言う)
  • 表現が直接的ではないこと
     (例:*I might join you later.*=おそらく行かない)
  • きちんと列に並ぶ キューイング・カルチャー
  • ファッションや音楽に見られる「伝統と革新の融合」
  • ロンドンが世界四大ファッション都市の一つであること

なども、具体例を交えて分かりやすく紹介されました。

帰国後のご活躍

 

 帰国後は、

  • NHKの英語教育番組に出演
     (「おとなの基礎英語」など。現在は EASY JAPANESE が世界で放映中)
  • フジテレビ報道局のニュース番組に出演
  • BSスカパー!の番組で、BBCとCNNの報道の違いを比較しながら解説

といった幅広い分野で活躍されています。

 

 特に印象的だったのは、

  • BBC:冷静でバランスの取れた報道。歴史や科学的背景を重視
  • CNN:アメリカ視点で速報性が高く、ドラマチックな構成

という、英米のメディアの特性の違いについての明快な解説でした。

 

 また、来日アーティストへのインタビュー経験から、音楽と英国の政治・経済・社会との関係について、年代によってハッキリと違いがあるなどお話しくださいました。

  • 1960年代:社会的自由化と音楽
  • 1980年代:フォークランド戦争と音楽表現
  • 1990年代:オアシスに代表される「クール・ブリタニア」
     — 英国人としての誇りと、前向きな未来へのメッセージ —

(テイラースイフトさんなど今活躍中のアーティストと)   

この後、英国を代表するアーティストの楽曲当てクイズに、笑顔があふれました。2010年代以降の楽曲はやや難しかったものの、詠美さんが優しく導いてくださり、参加者の皆さまはイギリスの「新しい風」に触れる楽しい時間を過ごされました。

ブラジルと英国の影響について

 

最後に、現在滞在されているブラジルについてもお話がありました。

  • ブラジルは南米最大、世界第5位の国土面積を持つ国
  • サンパウロには約160万人の日系人が住む、世界最大の日系人居住地
  • トヨタ、ホンダ、日産、三井物産など多くの日本企業が進出

また、19世紀のブラジル独立後、イギリスが最大の貿易相手国となり、鉄道や港湾などインフラ整備を支援した歴史についても触れられました。

結びに

 詠美さんは高校時代、関東インターナショナルスクールのスピーチコンテストで 3年連続優勝 されたそうです。当日は、イギリス・ロマン派の詩人 ウィリアム・ワーズワース の、湖水地方の春を描いた詩を朗読してくださいました。

 会場は静かな感動に包まれ、私自身もランカスターから近い湖水地方の風景が鮮やかに蘇り、詠美さんの朗読は時空を超えて心の奥深くに響きました。

ご両親から受け継がれたドラマメソッドと人間教育は、詠美さんの温かく、誰をも受け入れるお人柄として表れており、これからも世界を舞台にご活躍されることを心より楽しみにしております。

「イギリス文化に親しむ会」会員
元県立高校教諭/芸術・文化・人間教育 研究家

斉藤 好美